学生アンケートによる伝統的工芸品のイメージ分析

     ―職人の技術伝承に関する基礎的研究―

                                [平均年齢 19.2 歳  男性 99 人、女性 49 人(無記入1人)からの回答]

 

Ⅱ 学生アンケート調査結果からイメージされる「美術品」と「伝統工芸品」

(2)伝統工芸品の理解度と実見の有無

まず伝統工芸品という言葉について「知っている」、「知らない」の二者択一でたずねた

ところ、約9割の学生が伝統工芸品という言葉を「知っている」ことが明らかになった。

さらに、伝統工芸品という言葉を知っている人のうち、見たことがあると答えたのは 40.9%であり、伝統工芸品の言葉としての理解度と「実際に見たことがある」という実見とのあいだには大きな隔たりの存在を確認できた。

 

このように、学生の伝統工芸品に対する認識と実見の有無についてまとめると、①言葉として理解していても工芸品自体にはあまり関心を示さない、②伝統工芸品を見る機会は、博物館や美術館、工芸館など何らかの施設に行くことなしには得難い、ということが挙げられる。何らかの施設に行くという行動について、目的意識の存在を前提にするなら、伝統工芸品の鑑賞を目的に施設を訪れる可能性は、学生の年齢条件を考えるなら限定的にならざるを得ないだろう。

(3)「美術品」と「伝統工芸品」のイメージ

・「漠然としたイメージ語群(以下「A群」)

・「具体的なイメージ語群(以下「B群」)

 

a「美術品」のイメージ

「美術品」のイメージについて「A群」の上位5項目の回答は、①高価、②美術館・博物館、③観賞用、④文化財、⑤芸術家となった。 次に、「B 群」の上位5項目の回答は、①絵画、②彫刻、③陶磁器、④書画、⑤漆器となった。

 以上の分析結果から、学生のイメージする美術品をまとめると、「芸術家の活動による生産物で、(非日常的であり、)ゆえに高価で、保護や文化財的な側面をもち、(実用性というよりは、)美術館や博物館における鑑賞対象の物品であり、それらを代表するものとしては絵画や彫刻、それに美術品としての陶磁器といった視覚に訴える作品」となるだろう。

b「伝統工芸品」のイメージ

「伝統工芸品」の「A群」上位5項目の回答は、①職人、②手工業、③文化財、④少量生産、⑤高価となった。次に、具体的なイメージである「B群」上位5項目の回答は、

①漆器、②陶磁器、③染織品・刺繍、④織物、⑤木工品・竹工品となった。     *アンケート地が北関東の群馬県である

 

以上の分析結果から、学生のイメージする伝統工芸品をまとめると、「職人による少量生産を前提とした手工業によって生産される物品であり、ゆえに高価なものや、文化財的側面をもつものもあるが、具体的には、絵画や版画のような美術品ではなく、漆器、陶磁器、染織品・刺繍、織物などの実用性が考慮された日常品」となるだろう。

 

 特徴的なことは、伝統工芸品を見たことのある学生が、ない学生よりイメージする項目として、「高価」・「保護」・「鑑賞用」を選択している点である。これは、工芸品の「美術品的側面」を強く捉えており、生活に身近な「日用品的側面」はイメージされていないと考えられる。 さらに見たことのない学生が、ある学生より強くイメージする項目として「日常品」・「実用」・「人間国宝」などが選択されている。したがって、伝統工芸品を見たことのない学生の方が、伝統工芸品の「日用品的側面」(「日常的」で「実用」性がある)を強く捉えていることになる。

 

c「美術品」と「伝統工芸品」におけるイメージの差異・共通点

 伝産協会は、工芸品と美術工芸品との違いについて、美術工芸品の特色は趣味性、観賞性、作家性(在銘性)、希少性などであり、それ以外の工芸品は、日常性、機能性、非作家性、量産性をその特徴として挙げている 。しかし学生の伝統工芸品のイメージ(「実用性」より「文化財」のイメージが上位にあり、「少量生産」のイメージも強い)からは、「日用品的側面」より「美術品的側面」が強くイメージされている。

 このことから学生に関していえば、伝統工芸品に対して特別な興味や関心がない限り、日常的に工芸品にふれるという体験はなく、工芸品は美術館や博物館における鑑賞対象物となり、その製品的価値を見いだすことは困難になるだろう。

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『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会) 第8巻 第2号 

 2005 年 11 月 167 頁~ 185 頁

 市川祐樹

                       以上から引用・まとめを記載

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~個人的結論~

上記の資料をもとに考え、

「伝統工芸品」とは「非日常的で高価なもの」でなく自分たちに「もっと実用的で身近なもの」という理解が必要である。

「美術品」と「伝統工芸品」それらを正しく認識することは消費者側、ひいては生産者側にとって新ためて「伝統工芸品」を見て・触れて・考える切っ掛けを与えてくれるのではないか。

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